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カッサンドロス

翌朝さっそく、私はカッサンドロスの幕営を訪ねる。

いやそこは、幕営というよりも、一つの牧場であった。メッセーネーの郊外、スパルタとメッセーニアを分かつタウゲトス山脈の山裾に、数百、いや、千頭近くの馬が放し飼いにされている。

私が驚いたのは、その馬たちが、いずれも大型でたくましいことだった。先日スパルタで見かけた、農耕馬だかロバだかしれぬ、ろくに飼い葉も食わせてもらえてないような、短躯の痩せ馬ではない。明らかに戦闘用に鍛え上げた馬だ。

畜舎から馬の手綱を引いて出て来た男に、カッサンドロスの居場所を問うと、男は牧場の中の、馬の群れを指さす。

「あの、白に黒ブチの馬に乗っているのが、カッサンドロス様でさ。」

牧場の中に囲われた周回コースを馬に乗って駈けているのが、そのカッサンドロスらしい。ジグザクに馬を走らせたり、積み重ねた丸太や水たまりを飛び越えさせたり。若さ故だろうか、その手綱さばき、鞭の当て方。障害の跳ねさせ方。わざと馬を疲れさせるような乗り方をしているようにも見える。彼なりの調教の仕方と見えなくもないが、ただ未経験、未熟なだけにも見える。

「中に入ってもいいかな。」
「ええ。どうぞ。なかにはひどく気性の荒い雄馬もいます。お気を付けて。」

私は柵を乗り越え、ちょうど目の前を通り過ぎようとする若者に手を振って声をかける。

「あなたがカッサンドロスですね。私はエウメネス。マケドニア王の命令で、シリアから来ました。」

そう告げると、彼は馬から下り、鞭を脇に手挟み、側にいた一頭の馬のくつわを取り、その手綱を私に与える。並んで立つと、ずいぶん上背があるのがわかる。

「エウメネス。あなたは馬に乗れるね?」それが私への、彼の挨拶代わりだった。
「ええ。もちろん。」
「では、一緒にメッセーニアを視察しようではないか。」
「よろしいでしょう。」

カッサンドロスは、男の自分が見ても羨ましい肉体を持っている。オリュンピアの優勝者を象(かたど)った大理石像のようだ。腰には大刀を差しているが、その腕っぷしを見れば、あの蛮刀をやすやすと振り回す力があるのに違いない。他人(ひと)よりも大きな馬にまたがっているが、足は地面に付きそうだ。

カッサンドロスは速足(ギャロップ)で馬を走らせる。私はその後をついていく。まさかこのペースで、今日一日かけてメッセーニア中を走破するつもりだろうか?

その雰囲気は、若い頃のペルディッカスに似ているような気もする。ペルディッカスは血の気の多い、けんかっ早い性格だが、年を重ねるにつれて、王族らしい落ち着きが出て来た。今のカッサンドロスは、少なくとも王族の馬の乗り方ではない。では乱暴者のクレイトスに似ているか?いや、全然違う。彼にクレイトスの鈍重な感じは無い。

海岸線を西へたどり、岬の南端に達し、今度は北へ尾根道を行く。だいぶ登ってから、途中、馬に渓流の水を飲ませて休ませる。

「馬も疲れているし、俺も朝から馬に乗りっぱなしで尻が痛い。あなたもきっとそうだろう。しばらくあのあたりで休憩しよう。」カッサンドロスが丘の上を指さしてそういうので、二人で歩いて登る。

眼下には広々とした裾野が広がり、羊らは黙々と草を食み、牧童は犬とともに羊の群を御し、男らは農耕馬を引いて畑を鋤いている。

「ここがメッセーニアだ。そしてあれがメッセーニア人だ。」カッサンドロスが大地を抱擁するかのように両手を拡げて、詩人か、或いは王様のように言う。

なぜそんな解りきったことを言うのだろう、もしかしてこの男は馬鹿なのだろうか?それとも馬や召使いをたくさん持っていることを私に自慢したいのだろうか。そのために私をここに連れてきたのか。

「それにしても、ずいぶんたくさんの馬を飼っていますね。あなたの馬ですか。」
「いや、俺はただ預かっているだけだ。」
「では誰の馬です。」
「もちろんメッセーニア人たちの馬だ。」

私はちょっと不思議な気がした。

「国を回復してまだ日も浅いメッセーニア人らが、なぜあのように立派な馬をたくさん所有しているのだろう?」

カッサンドロスは、ちょっと驚いたような目で私をみて、それからくすくすと笑いだした。

「将を射んと欲せばまずその馬を射よ。民を見んと欲せばまずその馬を見よ。そうじゃないかね、エウメネス。」

私はそんな偉そうなことを言われて、ちょっとむっとした。しかしカッサンドロスは摂政の息子だ。年は私よりはるかに若いが、何か考えがあってのことかもしれぬと、私は沈黙する。

「ここの民はたしかに貧しい。しかし独立自治の民だ。彼らが耕す土地は彼らの土地。彼らが乗る馬は彼ら自身の馬だ。うらやましいとは思わぬか。彼らはもはやスパルタの奴隷(ヘイロータイ)ではない。ヘイロータイなら、あれほど無心に、熱心に畑を耕すはずがない。エウメネス、あなたはスパルタにも行ってきたのだろう。どうかね、農夫の違いに気づかぬかね。」
「そう言われてみれば。」

私は彼らメッセーニア人たちが貧しさの故にやむなく働いているのだと思っていた。そうではなかったのだ。彼らは胸の内に、夢と希望を抱いているからあのように勤勉に働いているのだ。

「見よ、エウメネス。あの連嶺タウゲトスを。」

タウゲトス山脈はスパルタとメッセーニアを分かって南北に走っている。それはここ、メッセーニア西部から眺めると、メッセーニアの東の海と空の間に長々と横たわっている。

「かの山には古来、太陽神ヘリオスがまつられており、ヘリオスには馬が犠牲に捧げられるのだそうだよ。」
「馬が?珍しいですね。」

ヨーロッパ人は、よほど飢餓に苦しまぬ限り、馬は食べない。同様に、牛や羊を犠牲にすることはあっても、馬を神に捧げるという風習は滅多にないのだ。

「俺は、メッセーニアに来て、馬を飼い調教するのに適した土地を探して、あの山の麓を過ぎた。そうすると土地の古老がどこからともなく現れて言うには、「あの、もし。そこのお武家様。なにかお探しですかな、」と。俺は来意を告げた。馬牧場に適した土地を探しているとな。すると、そやつが答えて言うには、「ここは古来より、タウゲトスにましますヘリオス様の神域であり、また神馬の牧場でございました。それゆえ、ここで馬をお飼いになるのは、まことに結構なことかと存じます。なぜならば、馬はヘリオス様のお使いだからです。」そう言うのだ。そしてさらには、「タウゲトスの絶頂には祭壇がございまして、そこにあなた様がお持ちの馬の中で、一番の駿馬(しゅんめ)を生け贄に捧げますと、ヘリオス様の神威が増し、かつまた馬を供した者には世界の果てまでヘリオス様のご加護があって、千軍万馬を率いて百戦百勝間違いなし。あなた様もそうなさいましょうな。そして、あなた様の御名も世界中に弘(ひろ)まることでしょう。」などとお追従を言うのだ。」
「それであなたは、タウゲトス山頂まで登って、犠牲の馬を捧げたのですか。」
「いや。俺はその老人を叱責した。「タウゲトスがヘリオスの山であり、馬がヘリオスの使いだという根拠は何だ。山と太陽と馬に何の関連がある。たとえ確かにヘリオスという神があの山にいて、馬が確かにヘリオスの使いであるとして、その馬を殺して捧げるなどということがあろうか。そんなもったいないことは俺には出来ぬ、俺の持っているうちで一番良い馬は俺が乗るに決まってる。」とな。そしていつまでも恨めしげに見ているその年寄りに一鞭くれて、追っ払ってやったわ。」

そう言い放って、カッサンドロスはカラカラと高笑いした。私はぼそりと言う。

「アレクサンドロスなら、その老人の言うままに、供儀したでしょうね。」アレクサンドロスは、昔の伝統は昔のままに残し、年寄りの言うことは言うがままにさせる人だ。

カッサンドロスはふんと鼻を鳴らして言う、「俺はアレクサンドロスではない。むろん、父アンティパトロスとも違う。俺は俺のやり方でやる。」

山腹に広がるレモン畑をぬうようにして山道を降りていく。
レモンの実はまだ小さく青い。
カッサンドロスが馬上から手を伸ばし、レモンを房ごともぎ取って、二、三個まとめてかぶりつき、路傍にぽいっとその房を捨てた。

「酸っぱくないですか?」
「あなたも食べてみたらわかる。」
「そりゃそうですね。」

私はおそるおそる一粒の実をもいで、かじってみた。
うん、すごく酸っぱい。

突然レモン畑が尽き、目の前に土埃(つちぼこり)だらけのメッセーネー市街が現れた。

「俺は牧場に戻るが、あなたはここでネアルコスの陣営に泊まるだろう。」
「ええ。」
「馬は適当にそのへんの駅舎に返せばよい。」
「わかりました。」
「今日は道連れがいて楽しかった。ありがとう。」

私はカッサンドロスに急に礼を言われて、少し恥ずかしくもあり、うれしくもあった。

「いえ、こちらこそ、あちこちを見せていただき、ありがとうございます。」
「俺はただ、ここメッセーニアで馬を飼っているだけではないのだ。なぜ俺がここへ来たかわかるか、エウメネス。」

別れ際、カッサンドロスは振り返り、なごり惜しそうにそう言った。

「糧食と兵を集めに来たと、ネアルコスに聞きました。」
「その通り。では、強い兵はどこで集めたら良い?」
「さて。辺境の蛮族を飼い慣らすと強い兵になると、聞いたことがあります。」
「辺境の蛮族?」
「トラキア人とか、その奥、イストロス(ドナウ)川流域のイリュリア人などですよ。」
「その話、誰から聞いた?」
「マケドニア王アレクサンドロスから。」
「なるほど。しかし俺はアレクサンドロスではないし、ここはトラキアでもない。ヒントをやろう。テーバイを滅ぼしたのはマケドニア人でもアレクサンドロスでもない。ペルディッカスでもプトレマイオスでもない。テーバイに滅ぼされた、亡国の民プラタイアイ人だったね?」
「ははあ。なるほど。」

私はすぐに彼の真意を理解した。

「スパルタに最も恨みを抱いているのは、スパルタに滅ぼされたメッセーニアの民だ、だから彼らはスパルタに対して強い兵になる。スパルタに復仇するために。だからメッセーニアで兵を募るのだと、あなたはそう言いたいんですね。」
「おや、俺のヒントはあなたには簡単過ぎたようだね。」

カッサンドロスは馬鹿ではない。若いのに、そうとう切れる。

「あなたは自分でそれを思いついたのですか。」
「そうだ、と言いたいところだが違うよ。俺が初めて思いついたことじゃあない。だが俺は俺なりに、スパルタの、ギリシャの歴史を学んだ。」
「つまり。」
「エパメイノンダスがすでにレウクトラの戦いで使った手だ。」

なるほど。テーバイの名将エパメイノンダスは、スパルタを討つためにアルカディア人やメッセーニア人を使ったのだ。カッサンドロスは頭が良いだけではない。その上良く学んでいる。

スパルタ人にとってテーバイのエパメイノンダスは征服者、侵略者だ。

しかし、アルカディア人やメッセーニア人にとってエパメイノンダスは解放者なのだ。

テーバイのエパメイノンダスはスパルタを弱体化するために、その隣の旧支配地を独立させ、その国を友邦として育て、支援した。今はマケドニアのカッサンドロスがその事業を継承している。

メッセーニア人はコツコツ倹約して、少ない稼ぎのうちから、少しずつ馬を買っている。安い馬じゃない。とびきり上等な、戦争に使える馬を()りに選って。神殿を建てたり、自分たちのために豪奢な邸宅を建てている場合じゃないのだ。

十分に馬が増え肥えたら。そのときこそは、スパルタに戦を仕掛ける時なのである。

「カッサンドロス。あなたはこれが初陣ですか。」
「違う。俺は二年前から、ゲタイで従軍していた。」
「ゲタイ。」つまりトラキアやイリュリアに棲む部族だ。すでに彼は、彼ら蛮族と戦った経験があるのだ。「あなたはゲタイ人と戦ったのですか。どんな種族でした?屈強な蛮族ですか?」
「どうかな。驕慢で臆病。強がっている割には逃げ足も速い。」
「ははあ。」
「そしてゲタイ人は皆、嘘つきだ。」
「要するに子供じみていると。」
「うん。まさに子供だ。ゲタイ人は森の中に棲んでいる子供だ。俺たちが森に入っていくと、奴らはさらに森の奥へ逃げ込む。俺たちが森から出ようとすると追ってくる。だから俺たちは森に火を放ち焼き払った。」
「ゲタイの森を?」
「そうだ。何年かかろうと、何十年かかろうと、俺はゲタイの森をすべて焼き尽くそうと心に決めた。」
「ご冗談を。」
「冗談じゃない。至って本気だ。ところがゲタイが泣いて許しを請いにきて、マケドニアに臣従を誓ったから、俺はゲタイ人を許した。ところが俺がメッセーニアに入って馬を飼い始めると、再びゲタイがマケドニアの領地に侵入して、我が牧場や耕作地を荒らした。そこで俺たちはゲタイにとんぼ返りしてまた森を焼いた。
そうしているうちにまたゲタイが泣いて詫びを入れにきた。俺はもはややつらを許さなかった。
やつらは、森を焼くと神の祟りがあるというが、俺は神など信じぬ。神とか、土地の古老などというものは、ほっておけばあとからあとからわいてくる。地面を掘ると、虫けらがいくらでも湧いて出てくるのと同じだ。
俺はやつらが逃げ込みそうな森をあらかじめ包囲しておいた。俺がやつらを攻めるとやつらは案の定、森に逃げ込んだ。俺は森ごと、やつらを焼き殺した。」
「まさか、女子供も?」
「そうだ。牛も羊も人間も、皆殺しにした。」

マケドニアの後背地トラキアはヨーロッパ、スキュティアまで続く広大な森だ。その森を焼こうとしたとは。無茶なやつだ。

「森を焼こうというのは、あなたの父、アンティパトロスの策か?」
「違う。父ではない。俺が考えたのだ。
ところが残党が次々に森の奥から湧いてくる。俺はやはりやつらを追い立てて、やつらはイストロスの中州に逃げ込んだ。そこは断崖に囲まれた、砦のような島だった。やつらは死に物狂いで抵抗した。しかし俺たちは船で取り囲み兵糧攻めにした。やつらは結局ひもじさをこらえきれず投降してきた。
俺は奴らに口を割らせた。やつらはペルシャ人から金をたんまりもらって豊かな暮らしをしていた。ゲタイ人はスパルタと結んだペルシャのために、スパルタに呼応して俺たちを背後から突っついて困らせていたというわけだ。何のことはない。僻遠の蛮族だと思っていたら、スパルタとペルシャに踊らされている傀儡(くぐつ)だったというわけさ。
俺はペルシャ人からゲタイ人に宛てた手紙も押収した。動かぬ証拠だ。父が王に報告した通りだ。
俺はゲタイのみならずトラキアに入植しているペルシャ人というペルシャ人をみんな殺した。そして捕虜にしたゲタイ人も見せしめに全員イストロス川のチョウザメの餌にしてやった。今頃黒海の船乗りたちは、太ったチョウザメのキャビアに舌鼓を打っている頃だ。
そうして、ゲタイの脅威を除き得た今やっと、俺はここメッセーニアに来ているのだ。」

私はぞっとした。私の生まれ故郷カルディアには、多民族が、ギリシャ人、トラキア人、フリュギア人、ペルシャ人らが入り交じって暮らしている。私にもいくらかトラキア人やペルシャ人の血が流れている。まったく人ごとではない。

「トラキアに入植したペルシャ人には無関係な者も多く含まれていたのではないか。」
「そんなことは俺の知ったことではない。ペルシャ人がわざわざトラキアくんだりまでやってくること自体間違っている。俺の父アンティパトロスは、あの放蕩息子アレクサンドロスがアジアやらリビュアやらをほっつき歩いているせいで、マケドニア本国と、ギリシャを束ねるコリントス同盟のすべての責任を負わされているんだぞ!あの愚かな王は、国政を放棄しているのと同じだ。そうではないか?だから俺が仕方なく、アルカディア人やメッセーニア人の尻をひっぱたいて、ゲタイ人をこっぴどく痛めつけて、獅子奮迅の努力をして、それでなんとかこうとか、マケドニアという国をやりくりしているんだぞ。」

彼の言うことは正論なのだろう。しかしなんという危険な、無慈悲な男だろう。なぜこんな若者がアンティパトロスの家に生まれ育ったのか。
カッサンドロスがもし王軍の中にいたら、彼はきっと軍中で浮いてしまうだろう。王と敵対することになるかもしれない。
しかしこの若者には、王とどこか似通った、ある種の威厳を感じないわけにはいかない。軍を率いる上で不可欠なカリスマを。
ひょっとしたらカッサンドロスはアギスに勝つかもしれない。そう思えてきた。


翌日、カッサンドロスは女神メッセーネーの依り代、イトメ山の麓に市民を集めて演説した。

「諸君、見よ、これは我がマケドニア王アレクサンドロスが、あなたがたメッセーニア市民との間に、永遠(とわ)の友好関係を結ぶために贈ったものだ。」
「おお、」「女王(バシレイア)メッセーネー、」と市民らは口々につぶやき、深い吐息を漏らした。思わず涙を流す者もいた。

それは女神メッセーネーの像であった。メッセーネーはメッセーニア建国の伝説の女王であり、かつてはメッセーニアの近隣、アルカディアやラコニアでも信仰されていた。そのこうべには月桂樹の冠を戴き、右手には上端に王の印を刻んだ長い笏をつかんで、地面を突いて身体を支え、左手にはミルク皿を持っている。

巫女たちが聖歌を歌い、竪琴を奏で、角笛を鳴らす。

雄の野牛が一頭、あらがいながら女神像の前へ引かれてくると、カッサンドロス自ら斧鉞(ふえつ)を手にとり、犠牲獣の後頸部に振り下ろして絶命させる。その血は祭壇の石畳を流れ落ち、メッセーニアの土に黒々と染み入っていく。

カッサンドロスはその手に野牛の角を掴み、頸の皮一枚と数本の頸動脈でつながった頭を引きちぎって、高々と掲げる。鋭利に切断された牛の頸から、カッサンドロスのたくましい上腕筋、そして大胸筋へと、血が滴っていく。

「見よ、今、メッセーネーの魂はここメッセーニアに呼び戻された!
女王メッセーネーは、アレクサンドロスが捧げた犠牲の血を嘉納された。マケドニアとメッセーニアの血盟が成就したのだ。諸君もまた我がコリントス同盟の一員となった。
諸君。いよいよ君たちが、スパルタに、アギス王に、積年の恨みを注ぐ時がきた。スパルタは君たちをヘイロータイの身分に落とし、奴隷として売り払い、使役し、また追放し、虐殺した。君たちはヘイロータイとなり、収穫物の五割をスパルタに取られた。君たちはこれまで、スパルタに鞭打たれるロバだった。
だがこれからはスパルタが君たちのロバになるだろう。俺は約束する。君たちが今度は、スパルタをヘイロータイにする時だと。俺と、そしてアルカディアの民と共に立ち上がってくれ。
メガロポリスには危機が迫っている。十日の後、我々はメガロポリスに進軍する。できるだけ多くの参加を期待している。」

十日後、メッセーネー神殿の前に集まった軍勢は優に一万人を超えた。おそらくカッサンドロスの軍だけで、スパルタと同程度の動員があるはずだ。彼らの目は、復讐心でギラギラと光っていた。